Act#19 手駒の死に様

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 戦局は変わった。

 セイレーンと引き換えに得た魔王のパワーは凄まじかった。大地を揺るがし、森を引き裂き、恐怖で空を震えさせたその咆哮は、天界へと届き、神の居城を暗闇で覆った。

 キングワルマは勝利を謳い、ワルマ族は皆、勝利を確信した。

 しかし、天界も負けてはいなかった。地上各地でワルマと戦っていた全ての天空人をワルマの要塞へ集結させ、総力で魔王を封じ込める作戦へ出たのだった。

 天空人とワルマ族は、互いに持ちうる魔力を全て、ワルマの要塞の上でぶつけあった。

 
最前線にいた者は、その魔力により、皮膚がただれ、骨は溶かされ、魔力のないものから順に消滅していった。続いて、後方に待機していた者が前へ出ては、同じように消えて行く。後ろで見ていた、魔力を持たないため、この戦いに参戦できなかった者にとっては、無意味で滑稽な消耗戦に思えた。

 ワルマの要塞は、この余波を受け、もはやその原型をとどめていなかった。美しい城壁はその魔力によりひび割れ、表面は火傷を負った皮膚のようにボロボロに崩れ、少し触れただけで、脆く剥げ落ちていく

 余談だが、ワルマの要塞に近かったオリオ地方は、この時の戦いの魔力障害で、大地には毒が溜まり、水は枯れ、人の住めない砂漠となったのだった。神にしてみれば、この後の歴史の中で、ワルマ族と人間を引き離すための手段として、わざとそこに魔力が溜まるように仕向けたのかもしれないが。


 そんな激しい魔力戦の中、ウィドウはアトモスとともに、城が崩れるのをしばらく見ていた。

 仲間は死に、思い出の場所は破壊された。この戦いに勝利したとしても、死んだ者は帰ってこない。

 そして、ウィドウは寂しそうな表情で、力なく、セイレーンの名を呼び、アトモスに別れを告げた。

 意を決したようにマントを翻し、コウモリの姿になった父親は、いつもの、自信たっぷりな皮肉屋の顔をしていた。


 そして、ウィドウは最前線に出て行った。

 他の五将魔曹は後方で万が一に備えていたのだが、前線の指揮を執ると言って、ワルマナイトの制止もきかず出撃したのだという。


 その後、淡々とした戦況報告で、アトモスはウィドウの最期を聞いた。

 たった一言………「消滅した」と。

〜 天のお仕事 Act # 19 手駒の死に様 〜